人間にとって大切な教育とは

神田 彩子(通信教育部事務室)

 

読書が好きになったきっかけは、「天の瞳」(灰谷健次郎著)でした。倫太郎という主人公の幼少時代から、生きていく中での人間の成長を描いたヒューマンストーリーです。

 人間というのは、赤ちゃんであろうと大人であろうと生きる目的を常に求めていきる動物であること。そして、人間如何に生きるべきか、人間にある使命とは、人間の中で生きることとは?様々な問いかけに対して一番大切なことは「心の教育」だと実感します。

 

 倫太郎は回りの大人たちに支えられて、成長していくのだが回りの大人たちも倫太郎のありのままに生きようとする姿に成長していきます。

 現在、社会の大きな問題としてクローズアップされている「教育のあり方」について、一人一人が真剣にこの問題について考え、意識していかなくてはならないと感じます。ゆとり教育とは?義務教育とは?大人の都合ではなく、子供からみた教育を見直さなくては解決しないと思います。そして、「天の瞳」にある本当の教育とは、人間と人間同士の中で築き上げられる「人の心を思える知識や知恵」だと思います。

 

 この小説の中で倫太郎の成長に大きく影響する人物に祖父の存在があります。倫太郎があらゆる場面で疑問に思う質問に対して、先ず、倫太郎はどう思うのかを問い、それに対して祖父が答えるという、やりとりが多くあります。相手に全ての回答を教えてもらおうとする少年に対して、祖父がとる行動は「先ず自分の頭で考えさせること」ということです。この小説が言わんとすることは、今の家庭環境や社会環境を振り返ったとき、「こうあらねばならない、こうあるべき」と言ったものに教育が縛られている。そこに大人たちが、子供に目線を向けてあげて欲しいとの必死の訴えなのではないかと、そして社会が変化する中で、教育の考え方、あり方も変えていかなくてはならないことを教えてくれていると感じます。

 

 この小説は、幼年編から始まり少年編、成長編と続くのですが、主人公の成長するストーリーに、人間として生きる中で教育が必要不可欠であること、そしてその教育は身近に存在することを教えてくれた一書であると思います。