『読書展』鑑賞記

大﨑 素史図書館長 

 

 読書展を鑑賞し、出口に立ったときの私の素朴な印象は、展示の充実度にびっくりし、学内でのみ終わらせるのは“もったいない”という感動でした。それだけに、この企画を実施された学生・図書館職員の方々の並々ならぬ準備と心遣いに対して深く頭の下がる思いがしました。

 

 こどもから大人まで、地域社会から国際社会まで、教育界から職業・生活レベルまで、読書が果たしている役割のすばらしさを鳥瞰できるように工夫されていました。味わい深く鑑賞させていただきながら、私の専門である教育学の立場からさまざまなことが頭をよぎりました。

 

 第一に、昨今全国の学校で行われている朝の読書運動が、1997年ごろから始まったといわれていますが、そのきっかけを作ったのが千葉県・船橋学園女子高(現・東葉高校)であったことを教えていただきました。これは教育界に大きな意義を投じたと思いました。すなわち、教育改革をリードしたのが文部科学省や教育委員会ではなく、一学校現場からであったということです。

 

 第二に、やがて、家庭での読み聞かせや学校での朝の読書運動は、国家レベルにおける政策化まで可能にしたのだと思いました。というのは、こういう事情です。2001年「子どもの読書活動の推進に関する法律」が制定され、4月23日が「子ども読書の日」と決められるなど、全国的な子ども読書運動推進が打ち出されました。2002年には、中央教育審議会の答申「新しい時代における教養教育の在り方について」で、人格形成とりわけ子どもの“国語力”の育成の上で読書の大切さが強調されました。さらに、昨年2005年、「文字・活字文化振興法」が制定され、学校における「言語力」の涵養をはじめ、10月27日を「文字・活字文化の日」と定めるなど読書と密接に関わる国家政策が具体化されてきました。

 

 大きくいえば、家庭・地域社会・学校の現場からの国民・住民の読書に対する地道な取組みが国家政策まで変えたことになりましょう。

 

 第三に、今回の読書展、また、現在取り組まれているSoka Book Waveも、本学の学生の英知に対してだけでなく、今後の教育界・大学界に必ずや貢献するであろう一つの流れを形成していると感じました。

 

 2004年1月22日(木)、中央図書館を訪問され、読書中の学生を激励された創立者は、「図書館は、大学の心臓部」との指針等を示して下さいました。また、創立者が青年のとき以来寸暇を惜しんで読まれてきた貴重な図書約7万冊を寄贈して下さったということに、創立者の学生に対する甚深の思いを感じながら、私は会場を後にしました。

 

 主催者の全学読書運動推進委員会の皆様に心から御礼を申し上げます。