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赤毛のアン 大森 英未(図書館員) 私にとってのきっかけの一冊は「赤毛のアン」である。 高校生時代の私の中での「図書館」とは、「夏休みの宿題をする場所」であった。高校生の時にバレー部に所属していたのだが、毎年夏休みに入ると、顧問の先生から「7月いっぱいに宿題を終わらせなさい」との厳しい言葉が投げかけられた。「宿題が終わらなければ練習に来なくていい」という先生の言葉に、私はクラブのメンバーと練習の合間や練習が終わってから、とにかく涼しい図書館に行き、必死になって宿題を終わらせた。図書館に何があるのか、図書館にある本をどう利用したらいいのか、私は全く知らなかった。唯一、図書館で借りた本として記憶しているのは、『赤毛のアン』だ。本を読むのが苦手ながらも心のどこかで「読まないといけないな」と感じていた私は、文庫本の並ぶ書架に『赤毛のアン』を見つけ、これならそんなに難しくなさそうだし読みきれるかな・・・と思ったのが『「赤毛のアン』を読み出したきっかけだ。 いざ読み出してみると、天真爛漫なアンにとても魅力を感じ、「次にアンは何をするのか、どう思うのか」と、どんどん続きが気になり、私はすぐに読み終えてしまった。いつも友達と話をしたり寝てしまっていた登下校の電車の中、夜布団に入った時、時には授業中に先生にばれないようにしながら「赤毛のアン」を読んだ。初めて本に夢中になれた時であったと思う。 孤児として引き取られたアンのことを迷惑がっていた周囲の人々が、周囲の人たちの心をどんどん変えてしまうアンにとても魅力を感じた。また、アンの自然を感じる心、その自然の美しさをなんともロマンチックな言葉で表現するところに、とても感心したことを覚えている。ただ「美しい」というのではなく、アンが豊かな言葉で表現してくれるおかげで、私も頭の中アンの見ている景色、世界を想像することができ、気がつくと、「アンの青春」「アンの愛情」「アンの友達」など、次々と「赤毛のアン」シリーズを読みつくしていた。この『赤毛のアン』を読んだことは、私にとって「私も本を楽しく読みきることができるのだ」という自信、また、本に対する苦手意識が徐々に薄れていくきっかけになったと思う。 今、私は図書館で働かせていただくようになり、学生の皆さんが図書館で本を借り、読書に挑戦する姿に触れ、私自身も改めて読書の大切さを教えていただいている。この学生の「読書」「勉学」という挑戦する姿に一番触れることのできる図書館で働かせていただいているからこそ、私自身も「読書への挑戦」「学ぶ」という姿勢を決して忘れてはならないと感じている。学生、また利用者の方々にさらに図書館を利用していただき、多くの本を借りていただくためにも、まず私自身が一冊でも多くの本と出会い、本の楽しさ、素晴らしさを実感し、より多くの利用者の皆さんの「きっかけ」をつくっていけるよう、努力していこうと決意している。 |
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