読書について(座談会)

 

日 時2008926日 17:0018:30

場 所:グループ学習室

参加者:学生11名、附属図書館長、職員2名

 

 

◇◇SBWの全体的問題について◇◇

【質問】創価大学で展開している全学読書運動「SBW」の意義をどのように考えますか?客観的に考えて皆さんの学習の向上に役立っていると思いますか?

Mさん

読書をしようという雰囲気をつくるきっかけになっており、読書の波を起こすという点で意義のあることだと思います。「読書をする」ということ自体が学習の向上に役立っているのではないでしょうか。

・YMさん

SBWの取り組みには意義があると思います。本を読むことで良い言葉が見つけることができ、知識の幅も広がっているように思います。そういう点で個人の勉学の向上につながっていると思います。

Kさん

今まで感想文を書く習慣がなかったが、SBWにエントリーし感想文を書くことで、文章をまとめる力がついたように思います。周りの人からも変わったといわれることがあります。 本を読むことだけでなく、書く力をつけるということを創大全体で展開できていることはとてもよいことだと思います。

・MTさん

本に触れる機会を増やす、本を読む動機付けという点では重要な意義があると思います。それぞれの学部の授業、また個人の学習に役立っているかという点においては一概には言えないなと思います。総合的にみた時に読解力がついて文章を書く力がつくということは十分期待できますが、現状どこまで効果がでているかというのは分かりません。

【質問】「基礎力は養うが、学部の勉強には役立つかはわからない」という意見に対してはどう思いますか?

・THさん

読む本によっても変わってくるのではないでしょうか。例えば授業で提示される参考書などをしっかりと読む人は予備知識が増え、学習の糧になっていくと思います。高校生の時に愛読していた雑誌に、「読書を1時間してから勉強した子どもとゲームを1時間してから勉強した子どもとではその後の学習の力に明らかに差が出てくる」というような内容の記事を読んだことがあります。そのように考えると、学習の向上に役立っているといえるのではないでしょうか。

 

【質問】2004年以降5年間のSBWの傾向性は、次のようになっていると思います。①参加率は約25% ②感想文を提出していただいている学生数は、参加者約2300名の内、約3割の800名(全学生からいうと1割) ③感想文の対象図書のレベルが低くなってきていると思われます。ライトノベルやハウツー本などが多くなっているように思われます。④提出いただく感想文は、授業のレポート提出と同レベルに考えておりますが、そのように捉えていただいていないように思われます。

上記の④にも繋がってくると思いますが、現在感想文30冊のうち256冊までライトノベルの感想文を提出する人もいますが、これについてはどう思いますか?

・TMさん

本にも娯楽本や良書といわれる本など色々あるが、娯楽本と良書といわれる本だと脳の活性化される部分が違ってくるという話を聞いたことがあります。娯楽本だと「楽しい」ということだけに終ってしまいますが、自分自身の人間形成のことなどを考えると、古典・創立者の言われる推薦図書を読む方が力になるし、論理力もつくのではないでしょうか。

・Mさん

素晴らしい意見だとおもいますが、それを創大生全員ができたら言うことはないのですが、そういう学生ばかりではないのが現状だと思います。

自分も本を読むのが苦手だったことを考えると、まず軽めの本自体が読めませんでした。そういう人にとっては、まず「本を読む」という状態になってからでないと、古典(良書といわれる本)などには手をだせないと思います。

・館長

私はライトノベル派に賛成です…(笑)本来、読了したいという意欲がある。そこで、ライトノベルを読了することによって、「○○氏の書いたライトノベルは私に聞け!」というような誇り、使命感がでてくるのではないかと思います。「軽さ」は確かに問題になってくると思いますが、読み終わったときの達成感が次のステップに進むきっかけになり、堂々と胸を張って歩けるようになってくるというようなことにもつながるのではないでしょうか。

そういう効果も考えられるから一概には言えないように思います。

・事務長

ただ、心配しているのは「図書カード狙いなのでは?」ということもあるんです。否定はできませんが、それで力がついていくのかというように思います。

・MTさん

ライトノベル30冊の感想文を書いた人が、その作者がものすごく好きで、どこまで深く読んだかとういことも考えれば、どうでしょうか。本の内容もそうですが、チェックを行う側にもかかってくるのではないかと思います。反対に図書カード狙いなのであるのであれば、危ないですがその見分けをどこでつけるのかは疑問です。その点でも感想文をチェックする人にかかってくるという部分もあるのではないでしょうか。

 

・事務長

現在、感想文チェック・受付処理は図書館職員6人で行っていますが、担当の職員で話し合った結果このまま書き続けても力がつかないのではないかとの意見になりました。今までの傾向性でいうと「おもしろかった」で過ぎていってしまうという印象をうけています。先ほどご紹介したライトノベルなど楽しい本で感想文を書いていただくのは差し支えありませんが、それだけで終ってしまうのはどうでしょうか。そこから教養書などに手を伸ばしていかなくてもいいのかということになってくると思います。

 

【質問】この5年間で「読むことに重点を置く」→「書くことに重点を置く」→「読む本のレベルをあげる」へと主軸を移してきました。このステップアップの一つが現在行っている書評になりますが、その時点でほとんどの人がとまってしまうのが現状です。「書く」ということにおいても個人差があるので一概には言えませんが、この形は適切だと思いますか?

・Kさん

自分自身も30冊まではいけるが、どうしてもそこで止まってしまい、書評には挑戦したことはありません。指定された本となると受身になってしまっています。友達と話していても書評までは考えていないという人もいます。

・事務長

大半の方はそうだと思います。昨年度実施した第2回読書力認定の際に15編の書評を提出された人がおり、15名の先生に文章力、構想力などを評価してもらいました。本人にとってもすごく良い勉強になったと思いますし、15編も提出すると文章を書く上での自分の傾向性もわかってきますね。去年の読書力認定のことをふまえて、館長どうでしょうか?

・館長

レベル的には確かに著しく向上すると思います。読み込みはかなり深まっていたと思います。

・事務長

あれだけのことを審査してもらえるのは、本人にとっては貴重な経験にもなると思いますただし書くのはかなり大変でしょうが…。

今の書評対象図書はレベルの高い物から読みやすいものまで用意しているので、ぜひとも多くの方に挑戦していただきたいと思っています。

 

◇ご自身とSBWについて◇

【質問】ご自身にとって、「SBW」参加の意義はどうですか?

・THさん

自分にとってSBWは本を読むきっかけになっています。図書カードがほしいというのも事実です。また、創立者がおっしゃられていた「4年間で500冊」ということを目標にしています。創価大学に入学する前からキャンパスガイド等を通して「SBW」の存在は知っていました。他大学にも読書マラソンなどがありますが、SBWは創価大学特有の取り組みで入学前から興味があり、参加したいと思っていました。

・YMさん

私はもともと本を読むことが好きですが、SBWの感想文を通して、他の人の感じ方・考え方を知ることが楽しみとなっています。図書カードをもらえるので、その図書カードで次の本が買えるので嬉しいです。

・Iさん

自分にとってSBWは良い意味でのプレッシャー、追い風となっています。また、常に意欲を持って読めるということにもつながっていると思います。書評も自分自身が読んだ本について深く追求できるので、SBWの一つの醍醐味だと思います。

・Aさん

エントリーをして「読まなきゃまずい」と思って読んでいきました。最初の一冊は読むのに苦労しましたが、しばらくして本を読むことで楽しさ、落ち着き、達成感、挑戦心が起きてくるようになってきました。

・Kさん

1年生の時に寮で参加したのがきっかけです。システムが良い、またやりがいがあると感じています。最近、感想文を提出した際に、「感想文の内容が良かったのでHPに載せたいと思います」という返信をいただき、すごく嬉しかったです。図書カードをもらえるというだけでなく、感想文を書くことに対してもやりがいをもてるようになりました。

・MYさん

図書券が欲しくて参加しましたが、アワードの存在を知り、就職活動でも活かせると思い、アワードにも挑戦しました。その目標が一つの励みにもなりました。

 

【質問】参加者の立場で改善を望む点はありますか?

・Aさん

感想文提出の際に気に入ったフレーズが100文字以内と書いてあるが、100文字以上の時があるので、書けない時があります。

・事務長

際限がなくなってしまうので字数制限は必要になりますが、もう少し文字数を広げることは可能です。

・Yさん

友達が英語の単語帳で感想文を書いていたが、それはいいのか?

・事務長

対象図書としてふさわしくない物は、感想文を再提出してもらう時もありますが、感想文の提出が1日に200枚~300枚出てくるときには、見逃していたのかもしれません。来年度からは、ふさわしくない図書を明確に提示したいと思っています。

・THさん

HPにも記載されていましたが、SBWに通教生が参加することは厳しいのでしょうか。

・事務長

感想文チェック等で人が足りないため現在の参加対象者を増やせないという原因です。また、現在もまだ制度が安定していないというのも大きな原因です。現在5年目になりますが、毎年毎年システムが変わっていくとなかなか安定しません。また、通教生はPCのログインパスワードを持っていないという問題もありますね。

通教生とは別に、考えなければいけないのが、受験生であると思います。受験生、または学園生が参加できれば良いと思い、学園とも意見交換していきたいと思っております。小学生は、「朝ドク」などですごく本を読むといわれていますが、中学、高校と学年が上がるにつれて読まなくなると言われております。そこで、中高生を巻き込んでいけば、スムーズに大学に入ってこれるのではないかと思っています。以上、様々、問題はありますが、受験生や学園生を視野に入れていっても良いと考えています。

 

◇来年度の取り組みについて◇

【質問】「感想文」とは別に、来年度「オススメ文」を追加し、どちらか選んで書いていただこうかと思っています。ショートレビューのようなものです。感想文の場合は、主観的に書く、オススメ文は人に薦めるという点に主眼をおいて書いていくという感じです。現在感想文を読んでいても思いますが、創大生は自分が読んでよかった本を他の人に薦めたいという気持が高いと感じます。このことについてどう思いますか?

・Mさん

それはオススメ文だけ30枚書いてもいいのでしょうか?また、感想文とオススメ文の違いが書く側にとっては難しくなってくるのではないでしょうか? 

・事務長

30冊オススメ文を書いていただいても大丈夫です。違いについては、感想文、オススメ文、書評文の違いをHP上に明確に提示します。1冊の本を通して、3種類の例題をだし、それを参考に書いていただければと考えています。

さらに、このオススメ文の追加に合わせて、来年グループ参加の取り組みを行おうと考えています。それぞれグループをつくっていただいて、グループごとにラリー形式でオススメ文を競い合うというものです。各学部の学習に役立つ図書約600冊を指定図書とし、その中から選んでオススメ文を書いていただくということになります。このことから、「読みたい本から読むべき本へ」との流れができるのではないかと考えています。提出していただいたものの中でも良いオススメ文を「創価大学基本検索」画面の「検索結果詳細」画面に掲載していこうと考えています。これについてどう思いますか?

・MTさん

それは、外部の方も見ることができるものになりますよね。すごく良いと思いますが、そのオススメ文がその図書について正しく読み取って書かれたものかということを誰が見るのかということも大事だと思います。

・事務長

今も感想文一覧もオープンになっているので、そういう意味では同じことになると思いますが、全てをだすというわけではなくて、表現や文法的な問題等しっかりと判断して掲載していきたいと思っています。

・Yさん

「検索する」というのは、ある程度読みたい本か決まっている人になってくると思います。何気なく図書館にきたけど、特に読みたい本は決まっていないという人にとっては検索をするところまでいかないと思うので見ないのではないでしょうか。そういう人にとって参考になるように、月に一回パンフレットなどを発行していただくことはできませんか。

・事務長

時期によっては、膨大な量になってくるので定期的にパンフレットを発行することは難しいかもしれません。しかし、貸出ランキングなどを皆さんに提示することはできると思います。

・THさん

良いと思います。学生の視点から書かれたものには、共感できると思います。

・事務長

まさしく共感度の問題だと思います。アマゾンのブックレビューを検索画面に出すということもできますが、実際に学生が書いた物の方が共感度の高い内容になると思うので、このような取り組みを行っていきたいと思っています。このグループで出していただいたオススメ文は個人の成果にも反映されますので、ぜひ皆さんも挑戦していただきたいと思っています。

 

【質問】最後になりましたが、来年度、読書サロンの立ち上げを考えていきたいと思っています。読書会、討論会、などを行うところになります。ここから、ニュースレターや小冊子の発行、またブログなどもできるのではないかと考えています。確定したメンバーで行っていくというよりは、その都度メンバーを募っていくという感じで考えています。これについてはどうおもいますか?

・Aさん

討論会、読書会などの啓発運動は素晴らしいと思います。ブログ作成などに関しては、図書館のHPを充実させていくことでは補えないのでしょうか?

・事務長

図書館で行うと、固定した人が書くことになるので、学生の言葉で書いていくことが新鮮味であり、読む側にも共感をよんでいくのではないかと考えています。

・HHさん

すごく良いと思いますが、参加者が固定されてしまうことが心配です。参加するメンバーがまだエントリーをしていない友人などを誘ってこれる場になればよいと思います。

・MTさん

人の問題かなと思います。読書会という取り組み自体が結構難しいものだと思います。ひとつの本を読んで語ろうとなってもなかなかできないのが実態であると思います。読書そのものに意義を見出してそこから盛り上げていこうという人をどれだけ集めていけるのかというのが問題であると思います。読書サロン自体の存在を明確にしていかないといけないのかなと思います。

・事務長

そうですね。ありがとうございます。読書サロンについては、もう少ししっかりと検討していきたいと思います。

ちょうど時間になりました。

皆さんの率直な意見をいただき、SBWの今後の方向性、改善点、反省点など色々な点で示唆をうけました。またしっかりと活かしていきたいと思います。本日は大変にありがとうございました。