世界一の人材城たれ ~アメリカ創価大学 池田大作・香峯子図書館~

 

                                赤石澤 敏和(教務部職員)※アメリカ創価大学1期生

 

皆が寝静まる真夜中でも、決して明かりの消えない部屋がある。24時間いつでも使える図書館の学習室である。あるときは向学心に燃える新入生のたまり場となり、またあるときは卒論と格闘する4年生が占拠する。ここでは「孤独な個人戦」であるはずの勉強が「愉快な団体戦」となる。先輩が後輩の質問に答え、がむしゃらに努力するその後輩の姿に先輩は励まされるのだ。お互いに励まし合い、支え合いながら、体力と精神力の限界に日々挑戦している。戦いに疲れ果て、居眠りをしだした学生がいびきをかくと、学習室には笑いが広がり、真剣勝負の緊張感でピンと張り詰めた空気が和らぐ。学習室前のテラスで対話に花が咲き、時を忘れて語りふけることもしばしば。学生は夜が明ける頃、朝靄に包まれて寮へと帰って行く。

 

2001年5月、太平洋を望む丘の上にアメリカ創価大学(以下、SUA)は開学した。そのキャンパスの中央部に位置する大学で最も大きな建物が「池田大作・香峯子図書館」である。上から見ると鳳が翼を広げたようなデザインのこの建物は、まるでキャンパスをその翼で包み込んでいるかのようだ。地上4階建ての建物の1階には約200種類の学術誌や国内外の新聞が用意され、いつでも閲覧できる。また創友会から寄贈されたニューヨーク・タイムズ紙のマイクロ・フィルムもここで閲覧が可能だ。貴重な書籍のコレクションはこの階の書庫に収められている。2階はメインフロアーとなっており、貸し出しはすべてここで行われる。館内閲覧用の大型書籍のほか、冒頭で紹介した24時間学習室もこの階に位置する。3階にはその他一般の書籍約5万冊が並び、グループでの学習に最適な個別学習室はテレビやDVDプレイヤー、ホワイトボードを完備している。そのほか、検索用のコンピューター、コピー機、プリンター、インターネットジャックがついた学習机などが各階に設置されている。4階には創立者池田先生より寄贈された約3000冊の書籍を収めたイケダ・リーディングルームや、大きな窓からキャンパスの北側に広がる大自然を一望できる学習室などがあり、ここも24時間いつでも利用できるようになっている。

 

建物の西側部分は、2階にコンピュータールームや学生のレポート作成を支援するライティング・センター、3階に学生課をはじめ、学生自治会や各クラブの部室など、現在は多目的用途に使用されている。これが将来的にはすべて図書館としての機能をもつことになり、22万冊以上の収容能力がある。現在の蔵書数5万冊は決して多くはないが、限られたリソースは充実したサービスで補っている。なかでもインターライブラリー・ローンというサービスを使えば、SUAが所有していない書籍を全米の図書館データベースから検索し、貸出可能な図書館から利用者は無料で借りることができる。SUAでは市民への図書貸出は今のところ行っていないが、このシステムを使えば、アリソビエホ市の図書館から、誰でも自由にSUA所蔵の図書を借りることが可能だ。また、8000種を超える電子ジャーナルの全文が無料で閲覧でき、これらのサービスを活用すれば、リサーチに必要な資料のほとんどは手に入れることができる。書籍のほかにも約500種のビデオ、DVD、CDの貸し出しも行っている。

 

図書貸出冊数に制限はなく、一人何冊でも借りることができる。2階メインフロアーにはセルフ・チェックアウト・プロセッサーがあり、フロントデスクを介すことなく、学生は自ら貸出の手続きを済ませる。蔵書の一冊一冊にICチップが添付されており、これがセルフ・チェックアウトを可能にし、図書を盗難から守る働きも担っている。このICチップ登録作業が、一年目の夏に、すべて学生の手によってなされたことはあまり知られていない。数千冊の図書をデータベースから検索し、一冊一冊にICチップを登録して張り付けるというのは、気が遠くなる作業だ。しかしプロジェクトに携わった学生は、その目立たぬ草創の労作業に喜びと誇りをもって取り組んだ。

 

開学5年目を迎えた今も、学生が24時間学習室に泊り込む伝統は変わっていない。また、授業の合間の短い時間にもここに立ち寄り、寸暇を惜しんで学ぶ学生も少なくない。ここで知識と知恵を蓄えた学生がキャンパスの隅々へと散っていく。こうして大学全体に「知」を通わせる源泉であるところに、図書館が大学の心臓部と呼ばれる所以があるのだろう。だからこそ24時間学習室は休みを知らない。大学の真価は卒業生で決まるといわれるが、大学の核たる図書館の真価もまた、その規模や設備ではなく、つまるところいかなる人材がそこから輩出されたかによるといえる。今は小さくとも、偉大なる創立者・奥様の名を冠した図書館は、その名に値する世界一の人材の城となる使命がある。