全学読書運動と連携した科目「インディペンデント・スタディ」がスタート

 

清水強志(文学部)

 

 後期から「インディペンデント・スタディ:読書と人間理解」という科目を担当することになった。すでに5回の授業を終え、学生も初めて設けられた科目の一期生として真剣に授業に取り組んでいる。

ところで、本講義の履修には、「本学全学読書運動Soka Book Waveにおいて10冊以上を読破し、感想カードを図書館に提出した者」という条件がつけられている。また、単位を取得するにあたり2つの提出物、つまり、学問的評価に耐えられる「書評」および自らの人間観・社会観・知識観構築のための思索の跡を伺わせる「エッセイ」の作成が必須とされている。

 

 私自身、はじめて聞く科目である上に、それらの条件を聞き、どのような授業を行うか悩んだ。その結果、シラバスでは以下のように書いた。「本科目では、『真理の探究』という学問の楽しさ、すなわち『学ぶ喜び』を追求する。受身的な学習から主体的な学びにシフトし、自らの人間観・社会観を構築する『自立学習』とはどのようにして可能となるのかを実践的に学習する。書物を読むとはどのようなことなのか(テキストの複数の読み方)などについての基礎的知識を得るだけでなく、自立的な学習者が書物とどのようにかかわってゆくのかを学ぶことが本講義の目的である」と。全学読書運動との連携から生まれたものであり、また「自主学習」という視点から、趣味のレベルではなく、学術的な意味での「読書の楽しみ方」を伝えたいとの考えがその背景には強くあった。

 

 当初は、私が課題図書10冊ほど提示する予定であったが、自主学習であることから学生自らの意志で1冊目の課題図書を決め、そして先日1回目の読書会が終了した。30分ほどのミーティングを行い感想を書いてもらった。感想の中には、〈1冊の本からこれだけ違った感想がでるとは思わなかった、自分の感想を言うのが精一杯で、相手の話をどのように広げていいかわからなかった〉などがあった。

 

 一冊目に学生が選んだ本は齋藤孝『読書力』(岩波新書、2002年)であった。読書論はひとそれぞれが自分の経験とともに身につけるものであり、そのまままねをする必要はないと思う。しかし彼はその中で、少々シビアな話をしている。彼は、文庫系100冊新書50冊読んではじめて読書力を身につけたと言えるとしている。そしてその有効期限は4年間。ちょうど大学生活と同じ期間である。しかしながら、月2冊読んで4年間で100冊しか読めないと聞き、非常にものたりない思いがした。

 

 本講義では、あと2回の読書会ができればいい方であろう。しかし、学生にはもっとたくさんの本を読んで欲しいと思っている。みずからの人間観・社会観・知識観構築のための思索をつづったエッセイの作成は、かなり大変な課題となることが予想される。しかしながら、「何のための読書なのか?」また「なぜ本を読まなければならないのか?」。今こそ、その答えを見つけるために、真剣に読書に取り組んで欲しいと考える。

 

 全学で行っているSoka Book Waveは今後も続けられると聞いた。ただ読むだけではなく、感想を提出することが非常に重要な行動だと思う。読みっぱなしにせず、必ず振り返る。そして自分にとって、その読書はどのような意味を持ったのか、この作業が重要であろう。今後も、多くの学生が全学読書運動に参加し、自らの学び、そして他人への学びに貢献し合える読書を展開していくことを強く望んでいる。