“第二の草創期”の図書館ガイダンス
 
                     杉山由紀男(社会学科助教授)
 
先日、社会学科1年生の必修科目「基礎演習」の時間に「図書館ガイダンス」
を行なってもらった。昨年まではこちらから要望しての「図書館見学」であっ
たが、今年からは中央図書館が主催する、力の入ったプログラムとして行なわ
れた。内容は「池田文庫」を含めた書庫見学、グループ学習室での図書館の概
要と利用の案内、セミナー室でのパソコンによる文献検索などであった。
 
終わって21名の学生全員がメールで感想を寄せてくれた。「本一冊一冊にい
ろんな人の考えとか人生みたいなのが詰まってるって考えると、膨大な本をひ
しめかせている図書館って、お腹でいろんな人の思いが渦巻く生き物みたいで
す。見学したらすごく本が読みたくなったので・・・。」「図書館見学は触発に満
ちていました。特に池田文庫に入ってみて、創立者の思索があれだけ多くの書
物に裏打ちされているのかと思うと、言葉を失ってしまいました。」「今回の
図書館案内は非常にありがたかったです。図書購入依頼、出庫依頼、短大図書
貸し出し依頼の方法などがわかって、本当に助かりました。早速短大から一冊、
書庫から三冊借りています」などなど・・・。
 
「図書館」といえば、第8回入学式で創立者は、小説『三四郎』で三四郎が
はじめて大学の図書館に入り、どんな本を借りても誰かが一度は目を通してい
ることに驚き「これはとうていやりきれない」と思ったシーンを紹介しながら、
「いかにも新入生らしい新鮮さとすがすがしさに、微笑を覚えるのであります。
(中略)諸君が書を読むことによって、やがては後輩たちが三四郎と同じ心境
を味わうようになる日がくることを、私は楽しみに待っているのであります。」
(『創立者の語らいⅠ』)とスピーチされている。
 
私自身が中央図書館で見たり借りたりする本にも、貸出履歴のついたものが
随分多くなったと実感する。とともに、感想のメールに「いかにも新入生らし
い新鮮さとすがすがしさ」を感じて草創の創立者のスピーチが思い出された。
そして図書館主催のガイダンスに、図書館としての“第二の草創期”の気概を
感じ、学生の皆と一緒に図書館のすべての本に貸出履歴をつけたいものと意欲
を新たにしたのである。
 
「人間というのは、全く飢えた生物である。動物は、食えば満腹している」
(『愛の断想 日々の断想』岩波文庫)とジンメルは語ったが、図書館はさし
ずめ、けっして満腹することのない巨大なレストランであろうか。