今日の一書 : 2014年3月3日(月)
『 雛 』
著者 : 芥川龍之介
【あらすじ】
明治時代の商家、紀伊国屋一家は横浜の亜米利加人に雛を売る約束をした。昔は羽振りがよかったが、今は雛すら売らざるを得ない程に没落していたのだった。いざ手放す日が近づくと、娘のお鶴はつらくなり、もう一度だけ雛を見たいと願った。しかし、父は許さない。兄によると、既に手付をもらっている以上人様のものであり、また見てしまったら皆に未練が出るからという父の配慮だった。
いよいよ雛を手放す日の前の晩、ふと眠りから覚めると、寝間着姿の父が雛の前に座っていて…。
——売られゆく雛人形に、没落家系の哀切を重ねて描いた一編。
(『教科書に載った小説』佐藤雅彦編 所収)