今日の一書 : 2014年4月8日(火)
『 ユージニア 』
著者 : 恩田 陸
ある夏に起こった大量毒殺事件。それに関わった人たちが事件について語る回想録のような形で進んでいきます。
みんな真実を語っているのだろうけど個々の視点や記録の曖昧さから微妙にずれてくる真実。推理小説として読むとかなり違和感があると思います。
結末で謎が完全に解きほぐされ、名探偵に「実は何の不思議もなかったんだよ。」と言ってもらうことで読者が緊張から解放されるというような物語ではありません。逆にこれは「何が謎なのか」を見つけてゆく物語であり、「この世界のあらゆる場所で不思議に立ち会うことになるのだよ。」と言われて読者は、薄ら寒い不安に取り残されるという結末になっています。
不思議な雰囲気にどっぷり浸りたいという方には、とてもお勧めです。