今日の一書

今日の一書 : 2015年7月10日(金)

『 失われた時を求めて 』

著者 : マルセル・プルースト

全体として語り手が回想しながら進んでゆくという記憶をめぐる物語である。「無意識的記憶」という隠喩を重視したプルースト独特の語り口で、また複雑で多くの修飾を伴った非常に息の長い文章が特徴であると言えよう。作中の語り手である「私」の名前が一度も出てこないのも面白い。
ベル・エポック時代のパリの社交界を舞台に、貴族とブルジョワのサロンの様子が克明に描かれており、徹底したスノビズムの描写も当時の風潮をうかがわせる。芸術に憧れる「私」が様々な経験を経たあとで文学的使命に目覚めるまでを描いた長大な物語だ。

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