今日の一書 : 2015年10月28日(水)
『 ツィゴイネルワイゼンの水邊 』
著者 : 平林敏彦
1951年に詩集『廃墟』を刊行した平林敏彦は戦後詩壇の寵児であった。しかし、あるとき忽然と姿を消し、沈黙する。
長い沈黙を破って詩集『水辺の光 一九八七年冬』を刊行したとき、平林は永遠の青年詩人として甦った。旺盛な創作意欲で次々と作品を発表し、1993年『磔刑の夏』は富田砕花賞に、2005年『舟歌』は現代詩人賞に、2009年『戦中戦後 詩的時代の証言』は桑原武夫学芸賞に輝く。
そして本年、最新詩集『ツィゴイネルワイゼンの水邊』が小野十三郎賞を受賞した。
作者があとがきで述べているピカソの言葉、「歳をとらねば若くはなれない」の通り、90歳を過ぎてなお真実の詩を求めてさらなる一歩を踏み出す詩人の珠玉の一冊である。