今日の一書 : 2016年7月5日(火)
『 銀の匙 』
著者 : 中 勘助
何といっても文体の美しさが比類ない。
物語は大人になった主人公が幼年期を回想し、思い出すままを語り口調で綴る。
幼い自分を取り巻く人や物、草木や花、動物など、何気ない日常の一コマ一コマを丁寧な、易しい言葉で描写している。巧みな表現を使っているわけではなく、あくまでも自然体で、流れるような言葉にのせて主人公が見ているものを読み手にも見せてしまう。
深い洞察力、清冽な文章。発表から一世紀を経た今でもその輝きは失われていない。
美しい日本語、その文章を堪能できる不朽の名作だ