今日の一書 : 2018年4月20日(金)
『 家守綺譚 』
著者 : 梨木香歩
物語を読んでまず思い浮かぶのは「自然」である。
草や花木、動物など自然界の自然、それともう一つ「人間の本性」としての自然…
緩やかに時の流れる、いつの時代のどこかは分からないが多分、近代日本の古き良き原風景の中で暮らす主人公。早世した友人が残した家に家守として暮らしているが、無くなったはずの友人が掛け軸の中から小船に乗って訪れたり、あやしげな野良犬が住み着いたり、庭の池に河童…?と奇妙な日常が淡々とした調子で綴られる。奇妙なのになぜだか自然に受け入れられる。自然と人間、生と死、あるがままをあるがままに受け入れることの安心感とでも言おうか。そういったものが伝わってくる独特の世界観を持った小説である。今では失われてしまったかもしれないものへのノスタルジーでもあるかもしれない。
いつも手元において繰り返し読んでみたい、そんな作品である。