今日の一書

今日の一書 : 2018年12月4日(火)

『 母の教え : 10年後の『悩む力』 』

著者 : 姜尚中

還暦を過ぎ、古希も近い歳になってから、私は、自分の心身の土台を母が形づくってくれたことを、深く体感するようになった。時にそれは、母が、私に憑依しているとしか思えないほどの生々しい感覚をともなっている。

私は今、母が身をもって示してくれた教えにならい、おのれに対しても、世間に対しても、絶妙な距離を置く場所で、白秋の終わりを過ごしている。
「人はね、裸で生まれて、裸で死んでいくと。お父さんもそうだったし、私もたい」
文字が読めなかった母が遺してくれた言葉は、そして表情は、さらに言えば、彼女についてのすべての記憶は、万巻の書物以上に——ことによると、夏目漱石やマックス・ウェーバー以上に——今の私を支えている。
やがて来る冬への備えは、母にならえばいい。
(「はじめに」より)

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