今日の一書 : 2020年11月6日(金)
『 誰でもない 』
著者 : ファン・ジョンウン
それが必要だった。すべてのものが消えてゆくこのときに。暗闇を水平線で分ける明かりのようなものが—喪失、暴力、孤独、格差、貧困…“今”をかろうじて生きる人々の切なく、まがまがしいまでの日常を、圧倒的な筆致で描いた8つの物語。 (「BOOK」データベースより)
ここでタイトルの「誰でもない」に触れておく。「アムドアニン(誰でもない)」は既存の文法をはみ出す言い回しであり、一般読者がこれを、「アムゴットアニン(何でもない、つまらない、とるにたりない)」という意味に受け取ってしまうのは無理からぬところである。「アムドアニン」は「他の誰でもない」「代わりのいない」という肯定的なニュアンスを持つ、ファン・ジョンウン流の異議申し立て、または一種の宣言といってもいいのかもしれない。 (訳者あとがきより)