今日の一書

今日の一書 : 2020年11月9日(月)

『 ニコライ・ゴ-ゴリ 』

著者 : ウラジ-ミル・ナボコフ著 ; 青山太郎訳

著者はゴーゴリに貼られているさまざまのレッテルを剥がし、一切の文学史的先入見を捨てて、ひたすら作品そのものに迫ろうとしている。ロシア文学における永遠のテーマのひとつ、ポーシロスチに関する論は貴重であり、また『死せる魂』第一部完成以後の時期をはっきり創作力減退の時期とする指摘も鋭い。ユモリスト、サチリスト、リアリストとしてのゴーゴリ像に執拗な反駁を加えながらも、著者は彼自身のゴーゴリ像なるものを何らかのドグマとしてうち立てようとはしていない。そうしたやり方は所詮ゴーゴリ像の新たな固定化を招来するにすぎないと承知しているかのごとくである。彼の批評はあくまで作品そのものとの深い接触をとおして、ゴーゴリというこのとてつもない世界の存在を読者にうかがわせること、読者をしてこの世界の前に素手で立たせることである。
「BOOK」データベースより

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