今日の一書

今日の一書 : 2022年2月9日(水)

『 らんたん 』

著者 : 柚木麻子

柚木麻子さんの本誌連載「らんたん」は、彼女の母校、恵泉女学園中学・高等学校の創立者、河井道をモデルにした小説である。

「河井道の生き方があまりに面白くて、ぜひ小説にしたいと思った。それも、楽しい物語にしたい、と。」

「女性の偉人伝って、男性の偉人に比べたらなかなかエンタメまで降りてこない。だから、読んで楽しめる小説にしようと思いました」

河井道は1877年生まれ。父は伊勢神宮の神職だったが明治維新の政策により失職。祖父と父が保証人になっていた男の事業が失敗したことで大損し、一家は北海道へ移住する。道はミッション系の女学校で学び、札幌農学校で教鞭をとっていた新渡戸稲造と出会い、周囲の薦めで19歳で上京。津田梅子の家に下宿しながら学び、米国に留学。帰国後は女子英学塾(現・津田塾大学)で教え、YWCAの活動に携わり、やがて1929年、52歳の時に恵泉女学園を設立する。右腕となったのは英学塾の学校の生徒だった渡辺ゆりで、彼女が一色乕児と結婚した後も、夫婦は道と共に歩んだという。

彼女たちは協力しあい、女子教育へと力を注いでいく。

「道先生は留学の時に学んだシェアの精神で、日本をよくしようとしていたんですよね。自分が見聞きしてきたいいものをみんなにとシェアしようとするのって、今でいうとインスタみたいなもの。テレビもネットもない時代、道先生は動くSNSみたいな存在だったんじゃないかな(笑)」

「WEBきらら 3月号」作者インタビューより

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