本書は、日本人にして初めてアメリカ歴史学会の会長になった入江昭氏が、自らの学究生活の遍歴と歴史を学ぶことの意義について書いたものである。さまざまな人との出会いが自分にどのような影響を与え、また世界の動きが著者の問題意識をどのように揺さぶってきたのか、といったことが簡潔に描かれている。入江氏の経歴を追うことによって、読者は学問に取り組む心構えを学べる。また、「地域主義と多角主義の共存の可否」や「歴史学の国際化」といった今日の重要な問題群の一端も垣間見せてくれる。 余談になるけれども、著者の尊父・入江啓四郎氏は、時事通信社の記者を経た後、大学教員となり、本学でも一時教鞭をとられていた。
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