いまさらこの本の内容について何か語るべきことはないだろう。凄惨さを極めた収容所で生き残った者はなにをすべきだったのか。フランクルは語ることによって死者を弔い、生者に警告を発する。 しかし期せずフランクルの願いはアンネ・フランクの日記と共に政治利用され、シオニズムの正当化に一役買うことになる。初版から30年経った新版では被収容者たちが公正な所長を庇う挿話が加筆された。この新版では生存者の告発という観点のみならず、群集としての被害者たちと加害者たちという図式的構造を乗り越え、個としての存在と他者が認め合う関係構築のための提言と読むこともできる。ここに今なお読み継がれる意味がある。
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