創価教育学の創始者牧口常三郎に関する著書は数多く出版されているが、その多くは彼の思想を解説したものである。それゆえ本書は、牧口その人を知るには最適な一冊といえよう。第一章では帝国主義の日本に生まれながら、命をかけてそれと戦った思想家としての牧口常三郎の生涯を歴史的に解説している。当時の時代背景や教育領域の変遷をたどりながら、その渦中で牧口が何を考え、どう行動したのかを詳細に描き出している。そこにいるのは徹底して真理を探究する「知の人」としての牧口である。続いての第二章では、彼の現した著作「人生地理学」や「創価教育学体系」などを取り上げ、そこに含まれた牧口の思想的エッセンスを解き明かしている。それは長き時を経た今でも色あせることはない。牧口の思想とは、当時の時代状況との比較の中でのみ評価されるものではないのだ。彼の思想は、これからの人類に求められる先見性を含んだ希望の光なのである。
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