本書に触れたきっかけは、河出書房のサイトで冒頭試し読みが公開されていて、それを読んだことです。 映画音楽を学ぶために田舎から東京に出てきた主人公、彼の引っ越し先の3代前の住人の幽霊の噂、その幽霊にまつわる人々。 噂に音楽に人間関係に翻弄される登場人物たちの描写が本当に美しいです。 文章は明治文体で書かれていて少し読みづらいですが、独特の雰囲気を生み出しています。 私自身、音楽大学に進むことを考えたこともあったので、がむしゃらに音楽をやる主人公たちに自分を重ねる場面も何度かありました。 ほろ苦い青春のすべてが描かれた、澄んだ水のような物語でした。
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