本書はアメリカ文学のファンタジー。『ゲド戦記』の第二巻。『ゲド戦記』というとジブリの映画を真っ先に思い浮かべる人がいると思うが、こちらが原作である。 一作目で自分の闇と向かい合ったゲドは、今作では主人公というより脇役的な立場にいる。今回の主人公はアルハという名前で、墓所の巫女を務めている少女だ。 物語は子供の頃から墓所にいるアルハの苦悩から、思いがけない訪問者の登場で大きく変化していくことになる。人から与えられていた立場という、安全で安心な場所から、全く何の命綱もない自由へと飛び出していくことへの恐怖、不安。そういったものが的確に描かれているように感じた。 児童文学と言われてはいるが『ハリーポッター』や『ナルニア国物語』に並ぶレベルのものであり、それらの話よりも自己との戦いの部分が大きく取り上げられている点でゲド戦記は児童書とカテゴライズするにはあまりに惜しい本である。
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