この短編集には、まったく異なる土地でまったく異なる生活を送る主人公たちの話が6篇収録されている。僕が思うに、彼らに共通しているのは、ほんの些細で、それでも致命的といえる問題を抱えているところだと思う。生活の不満がはっきりと描かれている訳ではないが、"僕"の乾いた言葉からその虚しさを汲み取ることができる。彼らは何気なく、意味のない行動をとり、6篇の中の多くは特に大きな出来事もなく語が終わる。彼らの中に自分を見る訳でもないけれど、この本の中の時間の進み方はやけに心地が良かった。
いいね! 0件
ログインしてコメントする
一覧を見る