どのページをめくっても、世の中への恨みつらみと、どこまでも醜い自分自身へのやるせなさが、声に出して読むのが憚られるような表現で並べられている。健康な状態の人間がこれを読めば間違いなく気分を悪くするのだろうけど、あいにく僕は健康な人間ではないので、貪るように最後まで読んでしまった。自分よりどうしようもない人間がいるんだ、と西村賢太の作品を読むたびに不健全な安心を覚える。社会に居場所がないと感じるすべての人にとって西村賢太は救いになると思うが、同時に、この文庫を手放さない限り僕は幸せになれないんだろうなと、表紙を見つめながら思った。
------