この本は浅倉秋成さんの話題になったミステリ小説である。ある会社の最終選考、そこで6人の大学生に起こった出来事をメインに描かれたものだ。私はこの本を読んで、人の考えほど単純なものはないと感じた。最終選考の中では、ページを追うごとに状況が二転三転する。穏やかな雰囲気から急な緊張、そして6人の互いへの気持ちもどんどん変化していく。選考の途中からはカオスそのものだ。現実ならそんな簡単に揺さぶられないだろうなんて、きっと読み手は言うことができない。なぜならこの本を読む自分自身の考えも、コロコロ変わってしまうからだ。知らなかった情報が明らかにされると、良い人、悪い人とレッテルを貼って喜んだりがっかりしたりしている自分がいる。読者も共犯だ。ただし、6人のうちの1人である嶌さんがメインになると、自分の気持ちも少し軽くなる。反省するとともに、人を信じようと思える前向きな気持ちが最後に出てくる。現代社会に溢れる情報に混乱している時、人を信じられない時にぜひ読んでほしい。
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