人々が少しだけ違う並行世界間で日常的に揺れ動いていることが実証された時代。 両親の離婚を経て母親と暮らす高崎暦は地元の進学校に入学した。勉強一色の雰囲気と元からの不器用さで友人を作れない暦だが、突然クラスメイトの滝川和音に声をかけられる。彼女は85番目の世界から移動してきており、そこでの暦と和音は恋人同士だというのだが、、、、並行世界の自分は自分なのか? この小説は「君を愛したひとりの僕へ」と同時刊行されており、どちらから読むかで感じ方が変わる作品となっている。「君を愛したひとりの僕へ」から「僕が愛したすべての君へ」を読むと幸せ感が残る。逆に「僕が愛したすべての君へ」から「君を愛したひとりの僕へ」を読むと切ない気持ちが残る。 私は本作の世界観がとても好きだ。物の位置が違ったり、何かを忘れてしまったりするのは、実は並行世界に移動しているせいだ、という設定がとても面白い。読了後、私も並行世界に移動しているのではないかと想像できる点も楽しめた。 本作の見どころは、何と言ってもその世界観から生まれる独特な思考や考え方だ。並行世界ならではの事件や推理が展開され、主人公と一緒に思わず考え込んでしまうほどだった。また、恋愛面でも、並行世界の概念が取り入れられており、とても興味深く楽しめた。 特に心に残ったのは、「可能性ごとすべてを愛す」という言葉だ。並行世界が存在するこの物語の中で、こうした言葉を言える主人公に深く感動した。
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