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アルジャーノンに花束を

おすすめ度:
 ジャンル:
名作
By みょん

 知能を高める手術を受けた知的障害者のチャーリイと白ねずみのアルジャーノンを中心に、チャーリイの経過報告書という形で物語が展開される。語り手がチャーリイ自身なので、文体の変化でチャーリイが現在どれほどの知能を得ているのかが分かり、チャーリイの思考や感情がストレートに伝わってきた。特に、チャーリイは純粋な気持ちで知能が高まることを望んでいたはずなのに、実際に物事が分かるようになり、過去の思い出したくない記憶を思い出してしまったり、憎しみや怒りなどの負の感情さえも知ってしまったりして動揺している姿を心苦しく思った。  また、手術直後の経過報告には「もしおまえの頭が良くなったら話す友だちがたくさんできるからおまえわもうずーとひとりぼちじゃなくなるんだよ。」(原文ママ)と書いていたが、知能が高まったチャーリイは「孤独は読んだり考えたりする時間を与えてくれる」と述べている。「ひとりぼち」と孤独の捉え方が対照的だったことがチャーリイの変化を象徴していると思った。  アルジャーノンの行動の変化を見て、自分自身にも同じことが起こりうると考えるのはチャーリイにとって恐ろしいことだったと思う。チャーリイにとって同じ手術を受けた唯一の存在であり、特別な思いを抱いていたアルジャーノンを失った失望は計り知れないが、日に日に知能が失われていく恐怖と戦いながら、最後までアルジャーノンへの想いは忘れなかったことが深く心に響いた。

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